billboard classicsが送る「藤井フミヤ・プレミアム・シンフォ…
2月10日、11日、大阪のフェスティバルホールにおけるbillboard classics「藤井フミヤ・プレミアム・シンフォニック・コンサート2015」。昨年実現した藤井フミヤ、初のオーケストラ公演のライブCD リリースを記念し、開催された。
再演の舞台では、フェスティバルホールの音楽空間に緻密な大阪フィルハーモニー交響楽団のアンサンブルと藤井フミヤの歌声が、指揮者大友直人のコントロールのもと絶妙にブレンドされ、完成度の高いオーケストラコンサートとして復活した。さらに、「MY STAR」「Snow Crystal」といった作品も加わり、音楽ファンにとっては、充実した音楽体験となった。
前半は、序曲「Another Orion」に続き壮大なオーケストラの響きに誘われた不朽の名曲、「TRUE LOVE」で始まった。そして、震災の地でギター1本で披露したという「Life is Beautiful」、オリジナルでは雅楽器が使われた「鎮守の里」など管弦楽へのアレンジが興味深い作品が並び、今回から加わった「Snow Crystal」では、ホール全体に静かに雪が舞っている情景が目に浮かぶような深遠な音世界が広がった。
後半は、「すっかりドヴォルザークに愛着がわいた」と藤井が語る、ドヴォルザーク作曲交響曲第8番第3楽章で始まり、藤井フミヤ自身がミュージカルの主人公を演じるように、リズミックな作品も披露。ステージ狭しと軽やかなステップを踏んだ「なんかいいこと」では、軽快な手拍子が沸き起こった。また、新たにダンサブルなナンバーの「My Star」が披露された。客席からは歌い出しを聴いた瞬間、感嘆のため息が漏れ聞こえた。
指揮者大友直人とのトークでは何度も会場が爆笑するようなホットなかけあいもみられ、「前回よりも安定感が増した」と大友が評したように、大阪フィルハーモニー交響楽団の奏でる音に乗せて、良い意味で緊張が和らぎ、終始リラックスして楽しむ藤井フミヤの姿が印象的であった。
「たくさんの音に包まれて歌えるのは幸せです」という、指揮者、そしてオーケストラを敬愛する藤井フミヤの素直な言葉が舞台にたつ約70名に及ぶ個々の音楽家たちと客席全体の心を温かく紡いだ。フミヤの音楽に捧げる言葉がもたらした何にも代えがたい独特な一体感が印象的なコンサートであった。
そして、藤井フミヤの新しい音楽表現となった舞台で誕生した、ここでしか存在しない時間を共有したことは、会場に集まった全ての人々の心を真に幸せに導いたに違いない。
(音楽ライター:中野里絵子)