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〈ライブレポート〉LE VELVETS、15周年を迎えたファンとの絆を感じるオーケストラコンサート

 【LE VELVETS 15th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2023 -Encore- 】が8月6日に東京文化会館で開催された。去る3月に行われ、再演を望む数多くの声が寄せられていた公演の再演になる。栗田博文指揮による東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラと共に、クラシックからミュージカルのスタンダードナンバーまで名曲続きのプログラムを披露した。

 トランペットのファンファーレが会場いっぱいに響き渡る。オーケストラによる「軽騎兵 序曲」は何とも開幕にふさわしい。金管楽器が奏でる軽やかな行進曲を耳にすると、これから上演されるプログラムへの期待が次第に高まり、客席が熱を帯びる。

 序曲の演奏の後、宮原浩暢(バリトン)、佐賀龍彦(テノール)、日野真一郎(テノール)、佐藤隆紀(テノール)が割れんばかりの拍手とともに舞台に姿を現した。真っ白なタキシードに身を包んだ4人は立っているだけで絵画のような様になっている。
それもそのはず、LE VELVETSはメンバー全員が“身長180cm以上、音楽大学声楽科出身”だからだ。ベースとなるクラシックからポップス、ジャズといったの多様なジャンルの音楽を自由自在に操り、観客を虜にしてきた。この日集まった観客も、歌う美術品を目に焼き付けようと双眼鏡を取り出し、身体がステージに一寸近づく。


 4人の晴れ晴れしいステージはカンツォーネ「’O SOLE MIO」で幕を開ける。佐藤の太くしなやかなロングトーンで会場を湧かせ、4人のハーモニーで締めくくる。

 公演を待ち望んでいたのは4人も同じだ。アンコール公演の舞台となった東京文化会館はメンバーが学生時代から特別な想いを寄せていた地でもある。「ここに立っていることが嬉しい」、「この地でソリストとして歌うことができて本当に光栄」というメンバーの発言からもその想いは窺える。

 4人が眩しいほどに照らされた場面から始まる「帰れソレントへ」。ここでは宮原・日野と佐賀・佐藤というパートごとの歌唱も披露された。何重にも層を作る歌声に観客は思わずうっとりと聴き入る。続く「誰も寝てはならぬ」では、壮大なオーケストラの響きと4人のハーモニーが共鳴する。

 立て続けに珠玉のクラシック作品を歌い上げた後は、メンバーそれぞれのソロステージへ。ここではクラシック音楽の深みをアコースティックの響きの中で聞いてもらうために、マイクを持たずに歌唱する。
まずは日野の「私を泣かせてください」(歌劇『リナルド』より)。多くの音楽家から愛されている美しく繊細なメロディーが、ファルセットを用いた日野の華やかな歌声によって奏でられた。
続く宮原は打って変わり、赤を基調とした照明の中「闘牛士の歌」(歌劇『カルメン』より)を披露する。劇中で闘牛士を鼓舞するように、オケにも負けない力強い歌声は会場の最後列にまで飛んでいく。
佐賀は「グラナダ」を披露。佐賀は演奏の前の楽曲紹介で、「グラナダ」はスペインに実在する街だが、作曲したメキシコの作曲家アグスティン・ララは一度もスペインを訪れずにこの曲を書いたことに触れ、「僕は行ったことありますからね!」と笑いを誘った。カスタネットやタンバリンといった打楽器のサウンドが印象的で、軽やかなラテン調のメロディーは聴衆を異国情緒あふれる想像上のスペインの地へ誘う。
ソロステージ最後となる佐藤が披露したのは「衣装をつけろ」(歌劇『道化師』より)。オーケストラの低音楽器から始まる舞台はそれまでの軽快感から一変、シックな印象を抱かせる。佐藤の深い響きは観客の心の奥深くに響き渡った。

 LE VELVETSは曲間のトークでも観客の心を掴んで離さない。ソロステージが終わり「皆様に見ていただきたいものが…」と仰々しく取り出して来たのは、今回の目玉グッズでもあるビルボードクラシックスとコラボしたトートバッグ。これには観客も思わずクスッと笑ってしまうほど。
続いて10月18日にオリジナルソングが収録されたベストアルバムの発売が伝えられ、会場からは割れんばかりの拍手が起きた。

 コンサートの前半最後に披露されたのは「乾杯の歌」(歌劇『椿姫』より)。佐藤のテノールと日野の裏声の対比が特徴的で、何とも豪華な締めくくりだ。聴き馴染みのあるワルツのリズムには思わず体も揺れる。

 後半はそれまでのクラシカルな雰囲気から一転、ピンクのジャケットを纏った4人がポップスやミュージカルで馴染みのある楽曲を次から次へと披露。全員で「You Raise Me Up」、「時が来た」(ミュージカル『ジキル&ハイド』より)を歌唱したのち、日野が「僕こそ音楽」(ミュージカル『モーツァルト!』より)を音楽に込める情熱と共に歌い上げる。続く佐賀が披露するのは「ラ・マンチャの男」。赤と青の照明のコントラストやメリハリのある声は、現実と夢の境目がわからなくなったセルバンテスの心情を忠実に再現している。オーケストラによる序曲(ミュージカル『ミス・サイゴン』より)が壮大なスケールで繰り広げられた後、「ブイドイ」(同上)を宮原・日野・佐藤が歌う。戦争のむごさや自分の生まれへの恨みつらみがひしひしと伝わってくる。最後はミュージカル作品の中でも人気の高い『レ・ミゼラブル』の世界へ。宮原が力強く伸びのある声で「STARS」を歌い上げた後、ジャン・バルジャン役を務めたこともある佐藤が「彼を帰して」で、身体から振り絞る声を舞台で解き放つ。レ・ミゼラブルの世界が舞台に広がった。
「LE VELVETSも音楽界に革命を起こしたい」という想いを語った後、本公演最後を飾る曲は「民衆の歌」だ。誰もが一度は耳にしたことがある、力強いテンポに合わせ小刻みに身体を揺らす観客を見ていると、まるで会場がひとつになったかのように感じられた。


 鳴り止まない拍手の中、メンバーがアンコールに選んだ楽曲は「Time to Say Goodbye」だ。「常にあなたが側にいてくれた」という歌詞からは、ファンとともに15周年を迎えられたことに感謝するメンバーたちの想いが窺える。その想いに呼応するかのように、涙を流しながら演奏に聴き入り、メンバーの姿が見えなくなるまで拍手をし続ける大勢のファンたち。今回の公演はLE VELVETSと集まったファンたちの絆をいっそう強く感じさせる、アニバーサリーイヤーにふさわしい公演であった。これから先もこの絆がより強く、深く続いていくことを願うばかりだ。


◎上演曲
M1 序曲(スッペ作曲 オペレッタ『軽騎兵』より)
M2 ‘O SOLE MIO
M3 帰れソレントへ
M4 誰も寝てはならぬ(プッチーニ作曲 歌劇『トゥーランドット』より)
M5 私を泣かせて下さい(ヘンデル作曲 歌劇『リナルド』より)
M6 闘牛士の歌(ビゼー作曲     歌劇『カルメン』より)
M7 グラナダ
M8 衣装をつけろ(レオンカヴァッロ作曲 歌劇『道化師』より)
M9 乾杯のうた(ヴェルディ作曲 歌劇『椿姫』より)
M10 You Raise Me Up
M11 時が来た(ミュージカル『ジキル&ハイド』より)
M12 僕こそ音楽(ミュージカル『モーツァルト!』より)
M13 ラ・マンチャの男(ミュージカル『ラ・マンチャの男』より)
M14 序曲(ミュージカル『ミス・サイゴン』より)
M15 ブイドイ(ミュージカル『ミス・サイゴン』より)
M16 STARS(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)
M17 彼を帰して(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)
M18 民衆の歌(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より)
EC Time To Say Goodbye

◎公演情報
【billboard classics LE VELVETS 15th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2023 -Encore-】

2023年8月6日(日) 東京文化会館 大ホール
出演:LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)宮原浩暢 佐賀龍彦 日野真一郎 佐藤隆紀
指揮:栗田博文
管弦楽:東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ

公演Webサイト
https://billboard-cc.com/levelvets2023-encore

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