CONCERT / INTERVIEW

KOKIA×栁澤寿男(指揮者)Special Talk
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  “Heart touching music”に寄せた、音楽によって心の距離が縮まるような演奏会に向かう、KOKIAの想い。
そして、欧州の戦地で演奏活動を続ける指揮者、栁澤寿男が抱く、音楽の一体感を創出する演奏会への想い。
ふたりの音楽家が2016年2月14日の演奏会に期待し、語り合ったスペシャルトークをお届けします。

—まず、それぞれの音楽に関する思いをお聞かせください。

KOKIA 私の場合はシンガーソングライターなので、音楽に対する想いや、伝えたいことは全て音楽の中に注ぐようにしています。なので、こうして改めて音楽に対する想いを言葉で語るというのは、苦手なのです。特に最近、自分の音楽を語るって、とても難しく思えて、こうした場面では言葉にしなければならないのはわかっているのですが、しようとするとすごく陳腐なものになってしまうような気がして、あとで「思っていたこととちょっと違うなぁ。残念だな。歌なら伝えられるのに、なぜ言葉では少し違うニュアンスになってしまうんだろう」と反省することが多いんです。自分自身を音楽に投影しているのが私のスタイルかなと思いますし、音楽の力を借りることで様々な想いを補って人に伝える力をくれるのが音楽の素晴らしいところだと思います。

栁澤 私は2001年にコンクールで賞をとってデビューしましたが、当初は来る仕事を一生懸命やることで精一杯でした。何年かしてバルカン半島、旧ユーゴスラビア、コソボに渡ることになりました。そこは、戦争が終わったばかりの地域ですから、音楽どころじゃない人たちが大勢いる。私がいたコソボからも毎日何百人もの難人がドイツへ移民していきました。国を出ていくことが夢、みたいな人がたくさんいる。そんな中で、音楽によって正気を保ち、音楽によって日々を乗り越えていこうという人たちがいるのを目の当たりにして、音楽が何かを伝える手段、ツールであるということを再認識し、KOKIAさんが歌っているように、愛を伝えていくことや、人と人のつながりの大切さを伝える、など自分が伝えたいことを音楽を通して伝えることを大切にしたいと強く思うようになりました。そして、音楽とは人と人の心が繋がるために存在してほしいと思っていますね。

—栁澤さんがなさっているような、平和に対する思いを音楽に託すことに関してKOKIAさんはどう思われますか。

KOKIA  私の曲の多くは、オーソドックスではありますが、平和に対する想いや愛というテーマが強くベースにある曲が多いのです。音楽に平和への想いを託してそういうことを表現している分、音楽以外の場でそういうことを語ると、思いもよらない政治的な形で言葉が独り歩きしてしまうことがあるので、この種の発言にはすごく臆病、且つ慎重になっている部分があります。ただ、栁澤さんがおっしゃっていたように、音楽は伝えるツールであることは間違いないと思うので、いかに多くの人に音楽に託したメッセージを伝えていくかということを考えると、世代とか時代とか国境とかに関係なく、どれだけ政治的なことを排除した上で普遍的な「愛」というものを歌っていくか、というところに行き着くのではないかと思います。私は歌詞を書く時、言葉を選ぶ時に、割と簡単でシンプルな言葉を選ぶように心がけています。簡単な言い回しにすることで、より多くの世代に響くと信じているんです。あまりかっこよくなりすぎず、同じことを子どもに伝えるように曲を書くように心がけることで、たくさんの人にメッセージが浸透するような、浸透率の高い音楽を残していきたいと思っています。 

—今回の演奏会の選曲について、柳澤さんとご一緒されることを意識していますか?

KOKIA もちろんです!いただいたインフォメーションの中から自分がイメージする栁澤さんってこんな方かしら、こんな曲を一緒に演奏してみたいな、と思いながら新しく演奏する曲を選びました。

栁澤  実は、僕は、昨年の演奏会リハーサルを聴かせていただいたので、本来のKOKIAさんのオリジナルよりも先にオーケストラと一緒の演奏を聴くことになったのです。お一人で弾き語りなどをされる機会も多いと思いますが、前回、オーケストラとご一緒されてどんな感じでしたか?

KOKIA  正直、オーケストラ、指揮者がいて、自分がいるというワンマンのコンサートは初めてだったので、はじめる前はおぼろげにどうなるんだろうという気持ちがありました。私にとって自分で書いた曲は、音の要素よりも言葉とか感情の要素の方が大切なことが多いのですが、どうしても人数の多いオーケストラとの共演では音楽的要素が先行しがちになると思うので、すごく自分の中でしらけてしまうことがあるんです。なので、その部分では、少し葛藤した部分がありました。たとえば、テンポ感とか、言葉を聞いてほしいというときに、ちょっとした心のタイミングがあわないと、ちょっとやりづらさを覚えたのは事実です。「どうしても、この言葉、歌詞を聴かせたい」というところにおいては、テンポ表記よりも言葉を聴いて演奏してほしい、見てほしい、待ってほしい、というような感じでした。

栁澤  これは、何の作品にしても同じだと思うけれど、場数というものが関係しているとも思うし、何回も回を重ねていくと音楽を熟知してくるというのはあると思います。ただ、私は、KOKIAさんの熱いけれど優しい歌声や、バラードの響きが、弦楽器の響きとすごくよく合うと感じましたね。

KOKIA ありがとうございます。それはすごく嬉しいです。オーケストラとの共演のお話をいただいたときは、昔からやってみたかったことなので、すぐに「ぜひ」とお返事させていただいたのですが、やはりこれまでにやったことのないことへの挑戦ということ、勝手の違うフィールドでの様々なことへの配分が上手く調整がつかなかったことが不安材料として残り、飛び抜けてそれ以上のところに行き着けなかったというのが1回目の感想です。今回こうしてまた新たな機会をいただけたので、大いにその経験を活かしていきたいと思っています。弦楽器と私の楽曲が合うというのは、普段のアレンジでもよく弦は使いますし、以前にヴァイオリンを自分自身が弾いていたこともあって、ヴァイオリンの音色をイメージしながら曲を書いたりもするからなのでしょうね。弦楽器だけでなくて、オーケストラの音色もすごく好きなので、いつかオーケストラアレンジでリリースしたいな、と思いながら書いた曲もあります。 
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—栁澤さんは、KOKIAさんの音楽をお聞きになって指揮者として引き出していく、心がけていこうと思っていることはありますか。

栁澤  これは、僕も経験があるのですが、普段一人で舞台の上で戦っている、一人で全てを作っている人がオーケストラと一緒に演奏すると、もう一人作っている人がいる、もう一人盛り上げようとしている人がいる、という現象に陥るらしいんですよね。ですから、イニシアティヴを取る人が二人いるような気持ちにならないように、一体感を大切に作り上げていきたいと思います。どういう風にするとKOKIAさんとオーケストラが一番いい形になるか考えながら、いつものステージとは違う形なのだけれど、これも良いな、これもありだな、と思えるような演奏会を作っていきたいと思います。 

KOKIA  よろしくお願いします(笑)今日の機会を与えていただいたことが大きく影響すると思うのですよね。 

—お二人にとっての音楽の持つ意味、またお客様へ届けたい思いなどをお聞かせください。公演日がヴァレンタインデーですので、そこに込める想いも何かおありでしょうか。

KOKIA  ヴァレンタインは、チョコレートを渡し合う儀式の日のようになっておりますが、今回のタイトル(“Heart touching music”)に込めた想いのように、物ではなく、音楽で心の距離が縮まるような演奏会になったら良いな、と思っています。それをふまえて選曲もしたので、大事な人とコンサートにいらしていただき、大事な人を思い描きながら音楽を聴くような時間になったら素敵だと思います。せっかく2度目の機会を与えていただいたので、オーケストレーションならではの世界観を皆様に味わっていただけたらと思っています。

栁澤 ビルボードクラシックスが行っている取り組みは、新しいサウンドを切り開くという意味ではハッとする瞬間があり、すごく可能性があると思います。普段のKOKIAさんのコンサートを聴きに来ているお客様たちに、これも良いな、と思っていただけるような演奏ができたら嬉しいですね。さらに、オーケストラを使って人と人が繋がっていくような、まさにタイトル通りのコンサートになっていくと良いと思います。観客の皆様と、KOKIAさんと、オーケストラとが一つになる瞬間が作り出せたらと思います。

—本日はありがとうございました。

世界のクラシック音楽の新しい魅力を導く多彩なパフォーマンスを披露します。