REPORT

Robert Glasper Experiment × Tomomi Nishimoto Symphonic Concert Report

新時代ピアニストがフルオーケストラとコラボレーション

ジャズ×クラシックが描く新世界へ!

ロバート・グラスパー・エクスペリメントと西本智実指揮によるフルオーケストラの世界初となる共演がこの6月に実現! 自身初となるクラシックへの挑戦についてロバート・グラスパー氏と、指揮者の西本智実氏にそれぞれ語っていただきました。

才能が呼応する“異色”のコラボ

Robert Glasper 47進化と拡張を続ける新世代ピアニスト、ロバート・グラスパー。彼のプロジェクト、ロバート・グラスパー・エクスペリメントと現代のクラシック音楽界の中心に立ち、世界で活躍する指揮者、西本智実の初共演が実現。ジャズをベースにヒップホップ、R&Bなど多彩なエレメントを自在に表現するグラスパーの革新的なサウンドが、西本智実が芸術監督を務めるイルミナートフィルハーモニーオーケストラと一体になった時、どんなマジックを起こしてくれるのか? エキサイティングな一夜の共演がやってくる。

「かねてから日本のクラシック・ミュージシャンと共演したいと思っていたので、今回のオファーは大変光栄に思っています」

 そう語るのは、オランダで毎年開催されている「ノース・シー・ジャズ・フェスティヴァル」で、昨年メトロポール・オーケストラと共にステージに立ったロバート・グラスパー。彼のピアノとエクスペリメントのメンバーの巧みなプレイはオーケストラと見事に融合し、聴衆を興奮の渦に巻き込み、絶賛を浴びた。

「あの時のアレンジは指揮者であり、私の尊敬する編曲家でもあるヴィンス・メンドーサと一緒に行いました。メトロポール・オーケストラとの共演は初めてでしたが、彼らは素晴らしい演奏家たちで、グレイトな経験になりました」(ロバート・グラスパー)

 パット・メセニー、ジョニ・ミッチェルなどに楽曲、アレンジメントを提供し、6度のグラミー賞受賞を誇る指揮者のヴィンス・メンドーサとのコラボレートは、グラスパーに新たな冒険心を呼び覚ましたに違いない。今回、日本で実現する一夜限りの共演も世界から注目を集めるのは必至。
Credit Daisuke Oki

 そして西本智実は、「私もジャズが好きで、彼の素晴らしい才能に大変魅力を感じており、今回の共演はとてもうれしく思っています」とロバート・グラスパーとのステージを語る。

「彼が持つグルーヴや語法を大切にしながらも、クラシック曲を演奏する時は土台としてのクラシック音楽のフォームを創っておきたいですね。セッションでは、お互いの色合いがクロスオーヴァーするような世界になればと思っています(西本)

 ジャズ・ミーツ・クラシック。過去にも多くの音楽家たちが様々な挑戦を重ねてきたが、ヒップホップやR&Bと共鳴したグラスパーの曲を、どのようなオーケストラ・アレンジとして聴かせてくれるのか、今回、最も気になるところ。

「オーケストレーションされた楽譜が届いてから実際的な私の仕事が始まるのですが、クラシックでは作曲家の作品に音を加えたり、アドリブを加えることはしません。ただ今回は、楽譜を見て、もしより効果的なオーケストレーション上のアプローチが可能ならそれも“あり”だと思っています。イルミナートフィルのメンバーが、既成概念を抜け出し、音楽の本質を体現させるようなステージになればと願っています」(西本)

グラスパー、モーツァルトに初挑戦

アドリブが身上のジャズと楽譜ありきのクラシック。今回の共演ではそれを超越する可能性を秘めている。グラスパーもアコースティック志向の“トリオ”と、ヒップホップ志向の強い“エクスペリメント”とでは、自身の役割を使い分けている。

「トリオで演奏する時はよりリーダーシップが求められるし、もちろんピアノにも集中しなければなりません。エクスペリメントの時はもっとグルーヴやヴァイヴを中心に考えています。今回は、私の“トリオ”のナンバーと“エクスペリメント”の『ブラック・レディオ』『ブラック・レディオ2』のナンバーを演奏する予定です」(ロバート・グラスパー)

 そして、今回特筆したいのは、グラスパーにとって初のクラシックの楽曲への挑戦。モーツァルトの「ピアノ協奏曲第21番 第2楽章」を世界初演として演奏する予定だ。

「クラシックの作曲家では、モーツァルト、ラヴェル、パウル・ヒンデミット、現代のピアニストではラン・ランが私のフェイヴァリットですが、今までクラシックの曲を演奏したことはないので、今回の挑戦は私も楽しみにしています」(ロバート・グラスパー)

 数あるクラシックの名曲の中でも「ジャズのアドリブを入れるにはうってつけの曲」(西本)というナンバー。今回のコンサートの聴きどころになるのは間違いない。

「ロシア革命以降、ジャズはクラシックの作曲家たちに多大なる影響を及ぼし、ジャズの世界にもクラシックは様々な影響を与えてきました。ユダヤ系ロシア人のガーシュインもその一人です。異文化との“接ぎ木”によって新たな音楽や文化が生まれてきたことを思うと、今回はその素晴らしい機会になると思います」(西本)

 クラシックとジャズの伝統と歴史に敬意を表しつつ、今までにない新しい試みに挑むことの重要性をこの共演は伝えてくれるはずだ。

「音楽をペインティングに例えるなら、そこには数えきれないくらいたくさんの色が存在します。オーケストラでは、それぞれのプレーヤーがキャンバスに個々の空間が与えられます。その結果、美しい絵が完成するのです」(ロバート・グラスパー)

 ジャズ×クラシックのクロスオーヴァーで“美しい絵”が生まれる瞬間を、ぜひコンサートホールで確かめてほしい。

西本智実:写真 大木大輔

PROFILE

ロバート・グラスパー

ロバート・グラスパー

ロバート・グラスパー(Robert Glasper、1978年4月5日 )。アメリカ合衆国 ヒューストン出身のアメリカ人ジャズピアニスト、レコーディングプロデューサー。ジャズピアニストとして、デビュー当時はトリオとしてジャズを主とした曲がメインであった。その後、Kanye WestやCommonをゲストに迎えるなど、ヒップホップやR&Bとジャズを融合させた曲を多く発表するなどミュージシャンとして進化を続け、現代を代表する音楽家としての評価を獲得した。第55回グラミー賞で最優秀R&Bアルバム賞を『ブラック・レディオ』で受賞。同作品では、ジャズとヒップホップを自在に体現し、音楽シーンに旋風を世界中に巻き起こした。そして、彼がリスペクトするヒップホップ/R&Bの豪華ゲストを迎えた同作品は各方面から話題を呼び、強豪アーティストを押さえグラミー受賞の栄冠に輝いた。その衝撃作『ブラック・レディオ』の続編となる作品『ブラック・レディオ2』では、ゲストにはコモン、パトリック・スタンプ(フォール・アウト・ボーイ)、ブランディ、ノラ・ジョーンズ、ジル・スコット、フェイス・エヴァンス、アンソニー・ハミルトン、スヌープ・ドッグ、ルーペ・フィアスコ、エミリー・サンデー、ドゥウェレ、マーシャ・アンブロージアス、レイラ・ハサウェイ、マルコム=ジャマル・ワーナー(俳優)と、前作よりさらに豪華な顔ぶれが揃い、さらなるネクスト・レベルへと進んだ。同アルバムはグラスパー自らのプロデュースによるオリジナル曲を中心に構成され、スティーヴィー・ワンダーの「神の子供たち」もカヴァーしている。尚、この曲は2012年12月にアメリカのコネチカット州のサンディフック小学校で起こった銃乱射事件で20名の児童が死亡したことに対する追悼が込められており、第57回グラミー賞「最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス」部門を受賞している。

オフィシャルサイト http://www.robertglasper.com/

西本智実

西本智実

 イルミナート芸術監督兼首席指揮者、ロイヤルチェンバーオーケストラ音楽監督兼首席指揮者、日本フィルミュージックパートナー。大阪音楽大学客員教授、松本歯科大学名誉博士。平戸名誉大使第1号、大阪国際文化大使第1号。 名門ロシア国立響及び国立歌劇場で指揮者ポストを外国人で初めて歴任、世界約30ヶ国の名門オーケストラ、名門歌劇場、国際音楽祭より指揮者として招聘。2013年よりヴァチカン国際音楽祭に毎年招聘され、2014年にはヴァチカンの音楽財団より【名誉賞】が最年少で授与。国家戦略担当大臣より感謝状、出光音楽賞など 受賞多数。
 2004年『Newsweek JAPAN』「世界が尊敬する日本人100人)」に選出、2007年ダボス会議のヤンググローバルリーダーに選出。2015年エルマウ(ドイツ)・2016年伊勢志摩G7サミットに向け、日本政府が海外へ日本国を広報するテレビCM及び日本国政府公式英文広報誌に国際的に活躍している日本人として起用。ハーバード大学院(ケネディスクール)"エグゼクティブ教育"にアメリカの3つの財団より奨学金研修派遣され修了。
 BSジャパン毎週日曜日午前10時30分~「ミステリアス・ジャパン」のナビゲーター、音楽・指揮を務めている。

西本智実公式HP http://www.tomomi-n.com/
写真:塩澤秀樹

イルミナートフィルハーモニーオーケストラ

イルミナートフィルハーモニーオーケストラ

芸術監督西本智実のもと、受賞歴を多く持つ国内外のオーケストラ首席経験者などの奏者で結成され、国籍・国境を超越する今までの既成概念から抜け出した新しいスタイルのオーケストラ。ヴァチカン国際音楽祭にウィーンフィルと共にメインオーケストラとして連続招聘をされ、京都南座ではオペラ『蝶々夫人』全幕を京都の芸妓・舞妓衆と共演、『高野山開創1200年記念法要演奏会』、『泉涌寺音舞台』、『開業125周年記念企画帝国ホテル芸術祭』等、各地の伝統芸能を採り入れ新しい融合により日本文化を世界へと発信。ベトナム公演での民族楽器ダンバオとの共演や2015年日韓国交正常化50周年記念の公演など、アジア文化の新しい融合も発信、また、グラミー賞受賞のジャズ・ピアニストのロバート・グラスパーとの共演等、幅広い活動をしている。2014年からオーチャードホール定期公演がスタート。テレビやCMにも出演多数。

 

イルミナート公式HP  http://illuminartphil.com 
イルミナート公式Twitter   https://twitter.com/IlluminArtPhil   
写真:新井秀幸

世界のクラシック音楽の新しい魅力を導く多彩なパフォーマンスを披露します。